SFと日常が交差する、不思議であたたかな物語——漫画『三角兄弟』レビュー

三角形なのに…兄弟!?

ある日突然、宇宙から三角形の“物体”が地球に降ってきた。彼らは「三角兄弟」と名乗り、子どもや猫の姿に変身して、地球人・野庭のもとに転がり込む。

野庭は、宇宙人相手の観光案内を担当する民間の地球人。彼のもとにやってきた三角兄弟は、なんと“惑星整地用ロボット”という、ただ可愛いだけじゃない謎めいた存在だった——。

こうして始まるのは、地球と宇宙をめぐるちょっと不思議な共生生活だ。


笑えて、泣けて、考えさせられるSF日常

『三角兄弟』の最大の魅力は、SF設定の中にリアルな感情と人間模様が息づいているところ。
兄弟たちは見た目こそ愛らしいが、時折見せる無機質さや無垢な行動が、むしろ“人間らしさ”を浮き彫りにする。

そして、野庭と兄弟の交流を通して、作品は「地球ってなんのためにあるの?」「生きるってなに?」という根源的な問いかけをしてくる。
笑いながら読める軽妙さと、ふと胸を突く深さが同居する独特の読後感が残るのだ。


全2巻完結+加筆あり! 読み応えも十分

2025年7月に上下巻で完結済みの単行本が発売。
雑誌連載時の内容に加筆・修正が加えられており、さらに描き下ろしエピソードも収録されているため、初読の人も再読の人も新鮮な気持ちで楽しめる。

特に終盤の展開は、静かに心を揺さぶる名シーンの連続。
短いながらも密度が濃く、読み終えた後にはじんわりと温かい余韻が残る。

あと、紙のコミックにはこだわりもあるらしいので、まだ購入していない方は紙がいいかも。書店限定の特典もあるので。
暑くて外出が億劫で電子で買っちゃったけど。


「かわいい」に騙されるな。これは確かなSFの良作だ

一見ギャグ寄りに思えるタイトルとビジュアルだが、中身は本格派のSFヒューマンドラマ。
『ドラえもん』や『フリクリ』『電脳コイル』といった、“日常の中の非日常”が好きな人には間違いなく刺さる一作だ。


『三角兄弟』はこんな人におすすめ!

  • 心に残る短編SFが読みたい
  • 日常×宇宙人という設定に惹かれる
  • 可愛い見た目の裏にある深いテーマが好き
  • 最近ちょっと疲れていて、優しい物語に触れたい