【音楽朗読】Yomibasho Vol.4母 – 堀井美香

上野の東京文化会館で行われた堀井美香の音楽朗読「母」

本作は、蟹工船など労働者のつらい生活を描いたプロレタリア文学で知られる小林多喜二の母セキ。その半生を綴った三浦綾子の小説を、NHKの大河ドラマ「光る君へ」でも知られるピアニスト川田健太郎の音楽と共に構成された朗読である。

亡くなった小林多喜二と残された母セキ

小説家として活躍しながら銀行員としても勤めていた多喜二。現在の日本では廃止となっているが、その当時は
「不敬罪」「治安維持法」というものが存在していて、多喜二が執筆した作品が不敬罪にあたるとして起訴を受けたり、政治的な活動に対して目を付けられていた。そして終には、警察によって拷問され命を落とす。

そして、キリスト教信者であった母セキは、息子多喜二の非業の最後にどう向き合っていくのか、自身もキリスト教を信仰していた三浦綾子によって書かれています。

母を朗読に選んだ堀井美香

音楽朗読と言っても、朗読劇のジャンルに分類されるであろう本作。「母」は秋田弁で書かれた本で堀井美香自身も秋田生まれの秋田育ち、そしてアナウンサー・ナレーターの技量の高さもある。とは言っても、朗読劇となるとこれまでとは違うスキルが必要になるだろう。

しかし、いま母をここまで読める存在は、堀井美香ではないだろうか。筆者は朗読の「ろ」の字も知らないタイプだけれど、そう思わせる魅力があった。

会場にいた多くの観客も同意してくれるはず。彼女の朗読が観客の心に届いているのが、その場の空気を通して感じることが出来たからだ。

それが出来たのは、秋田出身であることや声を発することの熟練度だけではなく、堀井美香のこの作品に対する思いも影響しているのではないかと思う。その思いについては、下記のPodcastや著書で語られているので、ぜひ読んで聞いてみてください。

・ジェーン・スーとともに配信しているPodcast「OVER THE SUN(オーバーザサン)」のEp.113

・堀井美香著/一旦、退社。~50歳からの独立日記「ある村を訪ねた。」

どうして、この作品を選び、長く続けていきたいと思っているのか、背景を知れば作品に対する真摯な姿勢にまた感動すると思います。

会場では思わぬトラブルも

当日は、昼公演に出演:堀井美香/西村まさ彦による「泥流地帯」、夜公演に出演:堀井美香の「母」の構成であった。じつは、昼公演と夜公演の通しチケット、夜公演のみのチケットでダブルブッキングが発生しており、やむを得ず夜公演のチケットの方のみ観覧できることとなった。

夜公演の終了後に舞台で、公演を観覧した上で金額見合わないと感じた方は返金を検討する、年内にあらためて母の公演を開きたい。このあとすぐ場所を押さえます。など足を運んでくれた方に満足してほしい気持ちを素の言葉で発っせられていました。その実直さも人を惹きつける魅力なのだと感じました。

関連情報

朗読のほかにも、多方面でご活躍されているので全部は紹介しきれませんが、未見・未聴の方はぜひチェックしてみてください。

著書
・一旦、退社。~50歳からの独立日記
┗TBSの退社や独立してからの日々をまとめたエッセイ
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BW37C6ZS

Podcast
・ウェンズデイ・ホリデイ | WEDNESDAY HOLIDAY
┗各業界で活躍している著名人と「働く」を考えるポッドキャスト
https://open.spotify.com/show/1KiyPzpM323YGixV4DwLZd

・秋田県民しか出ない
┗タイトルのとおり、同郷の秋田県出身の有名人をゲストに招いて秋田県人だけしか出ないでポッドキャスト
https://open.spotify.com/show/5DnaSFCmydEkIWFdd1hG4y